本の本

JAN06FRI2012/7:00AM
まったく2009年に失職して以来、十分な収入がないので本は買わないことにした。それと外ではモノを食べない。なるべく家で食事をする。それでも、時たまあるPart-Timeの仕事にありついたときは、外で食べたり、本を買ったりすることがある。

この三年間で買った本といえば、吉村昭「長英逃亡」「破獄」だけであった。後は図書館で借りてくる英語の本で補っている。英語の本は時間がかかる。THE_REMAINS_OF_THE_DAYが読み終わらない。これは映画をみて感動したので本を読みはじめたものだが映画でみた印象と本で読んだ印象がどれほど違うのかを知りたかったので読み始めたのだが終わらない。

ここ数年ブロッグを読んでいると、斎藤美奈子の世評が高い。そこでいつか斎藤美奈子のモノを読んでみたいと思っていた。書評家ということであるが、書評の本などはあまり買わない。小林秀雄、本多秋吾、柄谷行人江藤淳・・・などだが。クリスマス明けの27日に知己のトミタにクリスマスプレゼントを持ってマンハッタンに出たので、紀伊国屋で本でも買い、麺喰亭でラーメン・餃子でも食って帰ろうとした。UPSでクリスマス・シーズンのアルバイトしたので懐には幾ばくのカネもある。紀伊国屋の本が高いのに驚いた。文庫本のほとんどが20ドル近い。本体1000円が20ドル近いものになる。

そこでたまたま斎藤美奈子「本の本」を見つけた。ざっと読んでみた。これは軽薄体で書かれている。軽い感じの文体であるが、値段43ドル(2940円)、まあ、全集になっているし、筑摩書房だからすこしは高い。しかし、43ドルはすこし小生の範囲外であるので買うの止めて、ラーメンを食って帰った。

それでも気になるのでやはり買うことにしょうと、決意して昨日1月5日に再度、マンハッタンに出て、紀伊国屋に赴いて一時間ほど立ち読みして考えた。読書新聞に書いたものが多いから、短い。これは感想文といった感じ。松岡正剛「千夜千冊」も褒めていた。しかし、「白鯨」の感想文を読んで、あまり素人くさいので買うのを止めた。この人、プロとしては読み方が足りないのじゃない。率直な感想がそうであった。だって、この人は書評で稼いでいる人でしょう。すこしばかりの文体の妙で売るにしても、「白鯨」の感想は小生でも書ける。

朝日新聞から高い稿料もらっている人がこんなのを発表していていいのかしらというのが感想である。

56才でしょう。いや、あれは若いときに書いたものだからと弁疏するのかしら。いや、あれが12ドルぐらいなら買ったかもしれないが。知的所産に値段をつけるな――といわれるにしても、小生のような所得のない人間はアレは図書館で読むものかもね、

銀行から60ドルを引き出したけれど、吉村昭「わたしの流儀」($7.80)、「羆嵐」($7.80)、「戦艦武蔵ノート」($19.25)と計$37.90を使ってしまった。麺喰亭に寄らず、そそくさとNJに帰った。

斎藤美奈子石原慎太郎にも噛み付く”毒舌”と世評では書かれているので、ここでは吉村昭「わたしの流儀」にでてくる感想を添えておきたい「世の中に名作と呼ばれる作品にすこしも感動を覚えぬ場合、自分の観照眼が低いと思わぬことだ。自分の個性と相容れぬものと考えるべきである。・・・・・それは生まれつきの個性だから仕方がない」。(とはいえ、吉村昭は自分から病院で生命維持装置のコードを引きちぎった勇気ある人であり、それゆえに、4回の芥川賞候補で耐え抜いた人でもある)。